A ball of mesoporous Silica structure (not precise) by Mrudul, published Aug 6, 2015
メソポーラスシリカ(mesoporous silica)とは、2nm~50nmの規則的で均一な小さな穴(メソポーラス)を持つ、二酸化ケイ素(シリカ)でできた物質です。
メソポーラスシリカの最大の特徴である小さな穴(メソポーラス)は、規則正しく配列した構造のため、分子の吸着・放出性能があり、近年では様々な応用が期待されています。その分野はナノテクノロジーや光学、触媒、薬物、化粧品、吸着材料、建築材料など、多岐にわたります。[1]
二酸化ケイ素(シリカ)は土や石と同じ無機鉱物のため耐火性能に優れ、古くは七輪や耐火レンガの材料などにも使われてきました。また、天然素材のため毒性も低く、医療分野での応用も期待されています。
すなわち、メソポーラスシリカとは、簡単に言えば、小さな穴(メソポーラス)の空いた二酸化ケイ素(シリカ)となります。
様々な応用が期待されるメソポーラスシリカですが、我々の身近なところにもすでに活用されています。
植物性プランクトンの一種である珪藻(けいそう)という藻類がいます。この殻はシリカでできており、死滅すると、その死骸は水底に沈殿し、約800万年の時を経て化石化します。こうしてできた大量の堆積物は「珪藻土」となり、多くの場合白亜紀以降の地層から産出され、昔から壁土や漆の材料としても使用されてきました。[2] また、珪藻の殻には細孔が多数空いているため、天然のメソポーラスシリカとしても活用されています。
天然素材のため毒性が低く、生体にも使用できるため、タンパク質やDNAなどを取り込んだり、治療薬の位置および活性の追跡や、医薬品の分離など、医療の分野でも活用されています。また、水の汚染物質の除去や土壌改良、ガスの貯蔵など、その吸着性能を活かして用途は多岐にわたります。[3]
建材としては、昔からその高い保温性と程よい吸湿・放湿性能を生かして壁土に使われてきました。近年、自然素材への関心の高まりとともに、その扱いやすさから、再び人気が高まってきています。[4] ただし、貴重な珪藻土になるため、一般流通は少ないようです。
また、珪藻は2万種以上あるといわれ、珪藻土の産地によって細孔の大きさも様々なので、それぞれの特徴をよく見極め、目的にあった珪藻土を選ぶ必要があります。
メソポーラスは、ナノサイズの孔(穴)を沢山持つナノポーラスの一つで、2~50nmの細孔径があります。ナノポーラスにはその他に、細孔径が0.5~2nmのミクロポーラス、50~1000nmのマクロポーラスなどがあり、細孔径の違いから使われる材料と応用される分野はそれぞれ変わってきます。[5][6] 近年ではナノサイエンスの研究の高まりと相まって、ナノポーラスに関する研究・開発も活発に行われるようになってきました。
細孔径が異なると、細孔中に取り込まれた分子の挙動も異なり、応用範囲も変わってきます。
細孔径0.2~2nm
主な材料として、ゼオライト、カーボン、備長炭、竹炭、活性炭などがミクロポーラスになります。その細孔の小ささから吸着性が高く、消臭やイオン交換、ガス分離材料などに用いられています。
細孔径2~50nm
材料として使用されるシリカは狭い細孔分布と高い表面積があるため、様々なガス、液体および毒性重金属の吸着・放出などに使用され、医療や半導体、建築など、その新しい応用が期待されています。
細孔径50~1000nm
主な材料として、シリカゲル、スポンジ、軽石、ポリマービーズなどがあります。細孔が大きく吸水性が高いが、細かいものは吸着できません。乾燥剤や紙おむつ、ろ過材などに用いられています。
[1] Mesoporous silicate | Wikipedia(2017/01/05参照)
[2] 珪藻化石の処理方法 | 愛知エースネット(2017/01/05参照)
[3] メソポーラス材料の特徴・評価・応用 | SIGMA-ALDAICH(2017/01/05参照)
[4] すぐにサラサラ! 金沢の左官が生んだ“速乾バスマット” | 日経トレンディネット(2017/01/05参照)
[5] Nanoporous | Wikipedia(2017/01/05参照)
[6] ナノ粒子を精密合成 広がる多孔材料技術 | 日本経済新聞(2017/01/05参照)